FATIHA

2/2
前へ
/262ページ
次へ
 社会的ルールが確立するにつれて、新しく移住する者に対しての、いわば入国審査ともいえるシステムも生まれたが、錬金術師や魔術師、魔女は、自然科学の探求者として比較的容易に入国を許された。  技術の開発や科学的発見が次々と成されるところから、長い時間をかけて、自由主義で順応性のある傾向の国民性が出来上がっていった。  その環境が、探求者たちに居心地の良さを提供していたともいえる。  探求者たちが編み出した突出した技術が、いまだ一般の者まで恩恵に預かれるところまではいかず、探求者たちと一般人との間の生活形態に、かなりの乖離が生じてしまっているのは今後の課題ともいえたが、概ね探求者たちが阻害されるという空気はなかった。  自然科学を知らない文明の者が見れば、魔法と見紛うであろう技術や理論が発達していった。  空を見上げれば、北極星はまだ少し中心からずれ、北を示すのは別の星が使われていた。そんな頃である。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加