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急激に肩が大きく盛り上がり、目が険しく吊り上がった。顎と首が逞しく大きくなり、黄金色の毛に覆われた。
全身がふた周り、それ以上の大きさに変化し、両手両足が、ともに太い獣のものになっていった。
マルガリータの眼前で、くわっと大きな口を開けて威嚇したのは、一頭の大きな虎だった。
鼻筋に皺を寄せ開けた口に、二本のサーベルのような長い牙があった。
マルガリータは動作も表情も固まらせたまま、大柄な虎の口の中を見つめた。
「えと……」
あまりのことに、どう反応して良いかも分からない。
「兄さん、また気絶されたら、どうすんの」
カルロが言った。
カルロの落ち着き払った様子を見て、なぜか、ああ、落ち着いててもいいものなのね、と思ってしまった。
「まあ、こういう訳だから」
千切れてしまった服の切れ端を、二、三拾いながら、カルロが言った。
「来た所は間違えてないよ。マリア・ロレイナによろしく言っといてね」
「なっ、なぜ修道院長の名前を」
マルガリータは、カルロの方を振り向いた。
「聖カテリーナ女子修道院って言ってたから。ちょっと調べれば分かるよ」
カルロは言った。
「しゅ、修道院長に何かしたら……!」
「何もしないよ」
カルロは笑った。
ファウストの姿がぐにゃりと縮み、毛皮に覆われた肌が、人の肌の色に変わった。
ややしてから、同じ場所に足を投げ出して座っていたのは、全裸の男性だった。
「やややや、やだちょっ」
マルガリータは意味もなく両手をブンブンと振り、ベッドの上で後ずさりした。
全裸の男性を間近で見たことはなかった。
肌の色の面積の多さが生々しすぎて、正視していいものかどうか判断がつかない。
お構いなしという様子で、ファウストはカルロの方に手を伸ばした。
「カルロ、服」
「服脱いでからやりなよ」
カルロは呆れたように言った。
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