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両脇には、お付きの者らしい男性が二人。
マルガリータは、再び目を丸くした。
カルロ━━━━!
窓の向こう側にいるのは、間違いなくカルロだ。
きょっ、今日は玄関からとか、何しに来たの。
「素敵な方……」
修道女のひとりが、口元を抑えた。
「あんな方がいらっしゃるのねえ。見て、物腰の品格のありますこと」
えええええっ。
マルガリータは、頭の中で大きな否定の声を上げた。
「い、いけません、あの人は!」
マルガリータは慌てて修道女たちに詰め寄った。
「ソレッラ・マルガリータ、あの方をご存知ですの?」
「まあ、どちらの御家の方? 御名は何ておっしゃるの?」
修道女たちが言った。
「知ってます。城壁の傍に住む怪物です! 皆さま、近づいてはいけませんわ!」
三人の修道女は、ぽかんとした顔でマルガリータを見た。
「本当です。女性を誑かすのが好きで……」
「ソレッラ・マルガリータ、お薬をお持ちしましょうか?」
心配そうに眉を寄せられた。
何の病気だと思われたんだろう、とマルガリータは思った。
夕飯どきは、テーブルのあちらこちらで、花やいだくすくす笑いがしていた。
修道女全員で分けると、菓子は一口サイズになってしまった。
それでも修道女たちは、菓子を口に含むと、お互いに顔を見合せ、赤くなったり恥ずかしそうに口元を抑えたりしていた。
食事時には私語は禁止されているので、音声としては静かなのだが、目と目でカルロの噂をしあっている感じだ。
マルガリータは呆気にとられながら、スープを口に運んでいた。
ここは女子修道院では?
確かに、たまに男性が面会に来ても年配の男性が殆どなので、若い男性を見ることは滅多にない。
珍しいというのはあるのかもしれない。だがここは、神に仕えると誓った、清らかな女子の園では?
皆さま、堕落なさってるわ。
スプーンを握った手に、つい力が入った。
わたしは、お菓子に誘惑はされても、あの二人の誘惑には決して乗らなかった。
それ以前に、誘惑された覚えもないが。
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