i i i rosario

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 怪物(モストロ)の屋敷の仮面を付けた使用人は、マルガリータの顔を見ると、戸惑ったように口元に指を当てた。  無言で礼をすると、マルガリータを玄関ホールに置き去りにしたまま奥に消えた。  暫くして、入れ替わりに現れたのは、カルロだった。 「やあガリー、どうしたの?」  威勢よく声を上げたいのを抑えて、マルガリータは息を整えた。  相手は、いつからとも知れない大昔から生きている怪物だ。  こちらを騙す機会を待っている。  落ち着いて。  感情的になったら負けだわ。 「聖カテリーナ女子修道院から参りました」 「知ってるよ」 「昨日、素敵な物を差し入れしていただきまして、お礼に伺いましたわ」 「まあ、君の食べ残しだけどね」  ハハハ、と笑って、カルロは中に促した。 「お茶でも」 「いえ」 「あ、ミルクがいい?」  何か、既にからかいモードに入りかけているような雰囲気を感じる。  負けるもんですか、とマルガリータは大きく深呼吸した。 「ここで結構です。すぐにおいとま致しますわ」 「ああ、そう」  カルロは素直にそう返事をした。  勝ったわ、取り敢えず一勝したわ。マルガリータは、自分でもよく分からない達成感に高揚した。 「ひとことだけ注意をしに来たの。修道女たちをわざわざ誑かしに来るのは……」 「ロザリオ、ちゃんと保管してるからね」  不意にカルロは言った。 「え?」 「忘れて行ったよって伝えたよね?」 「あ」  忘れてた。  マルガリータは、手を組んだ。  信仰が足りないせいでは多分ないわ。いろいろばたばたしていたから。 「お手数おかけしました。持って来ていただけますか?」  余裕の微笑みを浮かべてみた。 「それがね」  カルロは腕を組んだ。 「ああいう神聖なものは、僕たちには触れられなくてね」 「え……」 「この前お茶を飲んでた部屋にあるから、自分で持って行ってくれるかな?」  この前の部屋……。  マルガリータは肩を僅かに傾け、玄関ホールの奥の方を眺めた。  あの部屋、結構奥なのよね。 「例えば、ハンカチに包むとか。それでも無理ですか?」 「無理だね。神の力が強すぎて」  カルロは、自分の手の甲をさすった。  触れば火傷してしまう、という意味に取れるジェスチャーだった。
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