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「では、ソレッラ・マルガリータ」
カルロはこちらに手を伸ばした。
「お願い出来ますか」
「え? ええ……?」
マルガリータはつい嫌な顔をしてしまった。
甘いお菓子処理係としてまた巧妙に連れ出す気だわ。
「いえ」
そんなに遠い所ではないでしょう、とマルガリータは言おうとした。
しかし、カルロが先に言葉を発した。
「大事なお祈りの時間を削いでしまうのは、申し訳ないと思います。しかし、弟はあまり遠出をしたことのない身。帰り道、余計に歩かせるのは不憫だと思いまして」
しれっと「困っている御曹司」を演じる。
「兄上、僕もう、疲れちゃった……」
レオナルドが話を合わせ座り込んだ。
カルロの目的を知っているのかは知らないが、面白がっているのだろう。
マルガリータは修道女たちを見回した。
座り込んでしまったレオナルドの様子を、みな心配そうに伺っていた。
手を差し出そうとしている者もいる。
何人かが、マルガリータの方をおろおろと見た。
え、ちょっと、という風にマルガリータは口を動かした。
わたしが悪者にされてない?
「いえ、皆さま、この人たちは……!」
マルガリータは、思わず声を上げた。
怪物で、しかもカルロの話によれば、レオナルドなんかここで一番の年上で。
いざとなったら、飛ぶなり四つ足で走るなりして、勝手に帰れる人たちで。
何か、言っても通じなさそう……。
マルガリータは、悔しさに震えながら項垂れた。
よくも毎回毎回、敬虔なる修道女をいいように扱ってくれるわね。
やっぱり怪物って悪質だわ。
いつか神の名の元に退治すべき人たちで間違いないわ。
「ソレッラ・マルガリータ、もしもご都合が悪いなのら、わたくしが」
先輩の修道女のひとりがそう言った。
その修道女の方を、みな一斉に見た。
「いえ、わたくしが」
「わたくし大丈夫でしてよ」
口々にそう言い出す。
一人目の修道女は善意から言ってくれたのだろうが、後から続いた皆さまは魂胆が見え見えだわ。
「いえっ」
マルガリータは修道女たちを制するように声を張り上げた。
「皆さま、ご心配には及びません。わたくしで充分です」
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