おーさまになってエルフを導こう

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彼女の名前はシエルというらしい。昨日の夜までまったく知らなかった。 「解った」 再び溜息を貰って立ち上がる許可を得た俺は、超特急で執務を終わらせ、町に繰り出した。 「おーさまー!おはよー!」 「おー、気を付けて遊べよー」 城門を抜けてすぐ、町の子供達が手を振ってあいさつしてくれた。 「よう、へーか。買い物かい?」 「おっす肉屋、今日も暇そうだな」 「ほっとけ、それより一勝負どうだい?」 「店番中にそんな事をしていたら、また上さんにドヤされるぞ?」 町の人達はフレンドリーだった。 まぁ、人間の俺なんか敬う対象にはならないのかも知れないが。 「陛下になんたる無礼な」 シエル登場、肉屋の後ろにスッと現れてその首筋にナイフを突き付けた。 どっから出て来たんだお前は・・・。 「やめろ」 「ですが!」 「やめろと言った、聞こえなかったか?」 「・・・はっ」 彼女は肉屋に怒気の籠った視線を向けると、そのままスッと消えた。 「おっかねぇな・・・今後は気を付けねぇとな」 「すまんな、最近妙に俺を持ち上げる奴らが多くて」 「へーかも大変だな」 「まぁな、おちおち井戸端会議にも顔を出せない」 快活に笑う肉屋に苦笑を返してその場を後にする。 目的地はアクセサリー店だった。別に自分で作っても良かったのだが、たまには買っても良いかもしれないとやってきたのだ。 「これはこれは、ようこそおいで下さいました、陛下」 「あー・・・うむ、首飾りを見せてくれ」 「畏まりました、こちらの棚にございます」 金や銀等の様々な金属で作られたネックレスに青や赤等の色取り取りな宝石があしらってあった。 「これを貰おう」 紫色の宝石を、金で縁どりしてあるネックレスを、買う事にした。 結構な値段だったが、一括で買った。 店の外に出て、シエルを呼ぶ。 「お前にプレゼントだ」 「そんな、恐れ多いです!」 「要らんのなら捨てるが」 「頂いて置きますが、一体どのような意向で御座いましょう?」 「夜枷の詫びだ、無理をさせ過ぎた」 「いえ、こちらこそ、満足させられなかった不甲斐なさをお許し下さい」 「そうだな、子を授かるのが嫌ならば、妊娠しやすい日には外しておくと良いだろう」 「なるほど、そう言う意図もございましたか」 シエルがその首飾りを外す事は無かった。
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