異世界でゆっくりと暮らしたい

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ここは街道の様だが、舗装されている様子は無く、土がむき出しになっている。 周囲を見渡しても人影どころか、生き物の気配すらない。 水瀬 隆哉人生初の迷子である。 「とにかくどっちに行けばいいのかを決めるか」 近くに落ちていた木の棒を拾って地面に落とす。 木の棒はサクッと言う音を立てて地面に突き立った。 「上か・・・」 そう呟いて頭上を見上げれば、何かが落ちて来ていた。 それは鎧を着て剣を腰に差している、女の子だった。 遠目に女性と解る程度には女性らしい体系をしており、とくにその胸部装甲は大きく盛り上がっていた。 「助けるべきか?」 もしかするとこの世界独特の遊び、と言う可能性もある。 下手に助けて、遊びの邪魔をするな!と言われるのも癪に障る。 だが、もし助けずに地面に激突したら、彼女の命は無いだろう。 と言う事で、俺は彼女を助ける事にした。 遊びの邪魔をしたのなら謝ればいいが、死んでしまったら謝る事も出来ない。 「エアクッション」 異世界初の魔法がこれだ。 空気が箱型に集まった所で彼女はその上に落ちて来た。 ボフンと音がして彼女の体が地面すれすれまで落ちて止まった。 そのまま魔法を解除すれば、彼女は落ちて来た時の恰好のまま地面に着地した。 トサッと軽い音がした。 彼女は腕で頭を庇い、膝を丸めて地面に背中を付けている。 ハッキリ言おう、パンツが丸見えである。 「大丈夫か?生きているか?」 「はっ!ここは天国!?それとも地獄!?」 「残念ながら現世だ、国の名前までは知らんが、どこかの街道だ」 「貴方は神様?」 「ただの迷子だ。いきなりここに出たもんだから、右も左も解らない」 「街道のど真ん中で迷子・・・ぷぷぷ」 少女は俺を馬鹿にしたように笑った。 「今さっき異世界から転移して来たんだから、迷っても仕方ないだろう!?」 東も西も北も南も解らないが、これが街道だと言うのなら、とにかくどちらかに歩けば町か村の一つ位有るだろう。 「助けて損した」 「誰も頼んでないわよ!」 「はいはい、別に気にするなってただの独り言だから。さて、行くか」 俺は地面に刺さった木の枝を抜いて再び地面に落とす。今度はちゃんと倒れてくれた。 「森か」 棒が倒れた方向には森しかない。 せっかく街道に居るのに、わざわざそこを離れて道なき道を行けと言うのか・・・。
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