異世界でゆっくりと暮らしたい

4/20
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
ここは街道の様だが、舗装されている様子は無く、土がむき出しになっている。 周囲を見渡しても人影どころか、生き物の気配すらない。 水瀬 隆哉人生初の迷子である。 「とにかくどっちに行けばいいのかを決めるか」 近くに落ちていた木の棒を拾って地面に落とす。 木の棒はサクッと言う音を立てて地面に突き立った。 「上か・・・」 そう呟いて頭上を見上げれば、何かが落ちて来ていた。 それは鎧を着て剣を腰に差している、女の子だった。 遠目に女性と解る程度には女性らしい体系をしており、とくにその胸部装甲は大きく盛り上がっていた。 「助けるべきか?」 もしかするとこの世界独特の遊び、と言う可能性もある。 下手に助けて、遊びの邪魔をするな!と言われるのも癪に障る。 だが、もし助けずに地面に激突したら、彼女の命は無いだろう。 と言う事で、俺は彼女を助ける事にした。 遊びの邪魔をしたのなら謝ればいいが、死んでしまったら謝る事も出来ない。 「エアクッション」 異世界初の魔法がこれだ。 空気が箱型に集まった所で彼女はその上に落ちて来た。 ボフンと音がして彼女の体が地面すれすれまで落ちて止まった。 そのまま魔法を解除すれば、彼女は落ちて来た時の恰好のまま地面に着地した。 トサッと軽い音がした。 彼女は腕で頭を庇い、膝を丸めて地面に背中を付けている。 ハッキリ言おう、パンツが丸見えである。 「大丈夫か?生きているか?」 「はっ!ここは天国!?それとも地獄!?」 「残念ながら現世だ、国の名前までは知らんが、どこかの街道だ」 「貴方は神様?」 「ただの迷子だ。いきなりここに出たもんだから、右も左も解らない」 「街道のど真ん中で迷子・・・ぷぷぷ」 少女は俺を馬鹿にしたように笑った。 「今さっき異世界から転移して来たんだから、迷っても仕方ないだろう!?」 東も西も北も南も解らないが、これが街道だと言うのなら、とにかくどちらかに歩けば町か村の一つ位有るだろう。 「助けて損した」 「誰も頼んでないわよ!」 「はいはい、別に気にするなってただの独り言だから。さて、行くか」 俺は地面に刺さった木の枝を抜いて再び地面に落とす。今度はちゃんと倒れてくれた。 「森か」 棒が倒れた方向には森しかない。 せっかく街道に居るのに、わざわざそこを離れて道なき道を行けと言うのか・・・。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!