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「まぁ良いか、じゃあな、次は落ちないように気を付けろよ」
俺はそう言って、彼女に手を振って別れようとした。
「ちょっと待ちなさい!あなた、そんな恰好であの森に入ったら死ぬわよ?」
「別に良いだろ、お前には関係ない事じゃないのか?」
「そ、そりゃそうだけど・・・一応助けて貰ったし」
「俺が勝手にやった事だ、気負う必要なんかないだろ」
「貴方、ひねくれ者ってよく言われるでしょう?」
「助けて損したって言ったら、頼んでないって言ったのは、そっちだ。お礼でもするって言うならまぁ、ついて行く事も吝かじゃないが」
「さらっとお礼の催促までするなんて、図々しいわよ!」
「別に催促じゃない。が、お礼でもないなら俺はあの森に行く」
それじゃ、と右手を上げて森に向って歩き出した。
「待ちなさいって言ってるでしょ!?」
「うるさいなぁ・・・、別にお礼もいらないし、忠告は有り難く受け取っておくから、もうそろそろ先に進ませてくれないか?別段急ぐ用事もないけどさ、日中に寝泊まりする所ぐらい決めておきたいんだ、用があるなら手短に頼む」
「貴方異世界から来たんでしょ?」
「随分前の会話引っ張り出して来たな、・・・そうだよ」
「じゃあ何かすごい能力とか持ってたりする?チョー凄い魔力とか!」
「いや、全部の属性の魔法は使えるけど魔力はちょっと多い位だと思うぞ?後、めちゃくちゃ運が良い」
「それだけ?何かショボくない?」
「お前喧嘩売ってるのか?良いぜ抜けよ、その飾りの剣で戦えるならな」
「ちょっと本気?これ本物だよ?」
「本物だろうが偽物だろうが、お前のへっぽこ剣は俺には当たらねぇよ」
手のひらを上に向けてちょいちょいっと挑発してやると、彼女は剣の柄に手を掛けた。
「後悔しても遅いんだからね!」
勢いよく剣を抜いた彼女が握っていたのは、剣の柄の部分だけだった。
剣の刃は根元からぽっきりと折れてさやの中に納まっている。
「・・・」
「解ってくれた?もう良いか?俺は行くぞ」
ふぁ~とあくびをして軽く背筋を伸ばし、俺は彼女に背を向けて歩き出した。
「な、何で・・・何でここで剣が折れるのよ!?」
「後悔しても遅いんだから!(キリッ)」
「ムキー!」
キレた彼女が剣の柄を俺に向かって投げつけてくるが、それはブーメランよろしく彼女の額へと帰って行った。
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