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「何だよ?」
「何でもないわよ」
森の入口、柄の無い剣の鞘を持った女は俺の後ろについて来ていた。
額は真っ赤になって瘤になっていた。
「付いてくるなら止めた方が良いと思うぞ?俺は持ち前の幸運で狙われたりはしないだろうけど、一緒にいたら狙われるかもしれないぞ?」
「大丈夫よ!私って結構強いのよ。自分の身くらいは自分で守れるわ!」
と言っていたのがつい10分前、現在彼女は大きなイノシシに追われている。
グレートボトゥンとか言う名前のモンスターらしい。
「観察してないで、助けなさいよ!」
「自分の身は自分で守れるんだろ?」
そう言いながら適当な石をエルシリアに向けて投げる。
勿論走っている相手にそんな物が当たる訳が無いが、エルシリアの後ろの猪の足元には散らばったようだ。
「あんたねぇ!!助けを求める物に石を投げるとか、鬼畜の所業よ!?」
エルシリアがそういった瞬間、猪は石を踏み、足を取られて横倒しになり、土煙を上げて地面を滑って行った。
「おー、予想より上手く行ったな・・・ウィンドスラッシュ」
横倒しになった猪が起き上がろうともがいている内に攻撃魔法をぶつける。
適当に放ったウィンドスラッシュは自然の風に軌道修正され、猪の頸動脈を切り裂いた。
大量の血が噴き出し、もがいていた猪はやがて動かなくなった。
「はぁ・・・はぁ・・・あ、ありがと・・・はぁ・・・はぁ・・・」
猪が動かなくなった事で走りつかれたエルシリアがよろよろと戻って来た。
「あー、まぁ、夕食の調達も必要だったし・・・塩とか持って無いか?」
「持って無いわよ、そんな高級品」
「マジかよ、この世界じゃ塩は高級品なのか?もしかして海が無いのか?」
「うみぃ?あんなのただのでかい水溜りでしょ?塩と何の関係があるのよ?」
もしかしてこの世界の海は、しょっぱくないのか?
俺はスマホを取り出して先程着信した番号を呼び出す。
『もしもし・・・』
「あー俺俺、俺だよ俺」
『隆哉君か、どうしたの?』
「この世界の海って、塩水じゃないのか?」
『いや、ちゃんと塩水だよ』
「そうか、良かった、塩が貴重とか言うから、海が淡水なのかと思った」
『君の疑問が解決して良かったよ。それじゃまたね』
「え?何それ!?なんなのその道具!?」
エルシリアが興味深々と言った感じに覗きこんで来た。
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