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「別に何も言ってないだろ」
数十分後、夕食を食べ終わった俺は木の棒を地面において手を離した。
「右か」
多分一番近い町が右の方に有るのだろう。
ツタを数本引き抜いて、木に登って体を固定する。
「そんな所で寝る積りなの?」
「モンスターが居る様な所で地面に寝たら、襲われるだろう?」
「たき火があれば大丈夫よ、獣は本能的に火を嫌うから」
「火の番をしてたら寝不足になるだろ?」
「あっそ、私は下で寝るわよ」
好きにすればいい。忠告はしたし、俺は知らん。
俺は着ていた上着を脱いで枕代わりにするとそのまま目を閉じた。
夜中、何度か悲鳴が聞こえたりしたが、無視した。
翌朝
「あんた!私が襲われているのに無視したでしょう!?」
「下で寝る事を選んだのはお前だろ、大体俺は木の枝に体を固定していて動けなかったんだし、助けられる訳ないだろ」
「魔法使いなさいよ!」
「助ける義理は無いだろ」
「冒険者は他の困っている冒険者がいたら助けるのが義務なの、ギルド規約にも書いてあるわよ」
「そもそも俺は冒険者ですらないんだが?大体襲われた理由だって、お前が意地張って地面で寝たからだろ?」
「だって木の上とか、怖いし・・・」
それで襲われて怖い目に有っていたら同じだろう。
俺は盛大に溜息をついてエルシリアに手をかざした。
「ヒール」
「・・・ありがと」
多少の寝不足なら、これで十分回復できただろう。
「俺はあっちに向かう、お前はどうするんだ?」
「町まで付いて行ってあげるわよ、途中で盗賊にでも襲われたら寝覚めが悪いもの」
俺一人なら、絶対に襲われない自信があった。
襲われても猪の毛皮と、今着ている服位しか取る物も無い。
「そうか、じゃあとりあえず案内頼むわ。俺はタカヤだ」
「知っていると思うけど、私はエルシリアよ」
「聞きたい事があるんだが、何でお前上から降って来たの?」
「飛行魔法の練習中だったの、そこにちょうど良く人が立ってたから、そこまで行ってUターンして帰ろうかと思ったら、魔力が切れて落ちたのよ」
こいつの危機管理能力、どうなってんだ?
魔力が切れて落ちるとか、しかも目的地まで半分の距離を残してだぞ?
あまりにもずさん過ぎる危機管理に、俺は盛大なため息が出てしまった。
ここは俺が一肌脱ぐしかないだろう。
「低い所をゆっくり飛ぶぞ」
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