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――カチャッ
重厚な趣の木製のドアをしっかりと施錠し、上を見上げた。
字体や、欅の木目にまでこだわった、自作の看板を。
『パティスリー eins』。
『eins』は、ドイツ語で『壱』を意味する言葉。
店名をこれにすると告げた時、珍しくふんわりと微笑んでくれた人は、スイーツ嫌い。
『甘いモンは、この世で一番嫌いだ』と言い切ってしまう人。
でも、チカの作ったスイーツだけは黙って口にしてくれる、優しいひと。
「さて、急がなくちゃ。
どうせ、『遅ぇぞ』って凶悪なカオで文句言われるだろうけどね。ふふっ」
ちょっとイラつきながら、それでも自分を待っていてくれるだろう壱琉の姿を思い浮かべ、夜の街に駆け出した。
明日も、その先も。叶うならば、ずっと。
少しでもたくさん、壱琉と同じやり取りができたらいいなと思いながら――
―Fin―
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