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けれど、戦闘態勢をとった時から、それは分かっていた。
ついさっき、咄嗟の判断でケーキ皿からフォークを取って払い落とさなければ、伊織が持っていたメスが自分の手首を切り裂いていたのだから。
「伊織さん? 念のため、もう一度言うね。
チカは、いっちゃんに近づく悪い人は許さない。
このまま、おとなしく店を出て行くか、ぶちのめされて放り出されるか。どっちか選んでよ」
すうっと目を細め、殺気をさらに濃くしながら低く恫喝した。
そして、表情に出さずに高速で思考を巡らせる。
わぁぁ。こんな修羅場、ひっさしぶりだなぁ。
ウィーンでの修業中に、ごろつき10人に絡まれて以来かな?
えーっと、日本の正当防衛って、どこまでアリだったっけ?
うーん……ま、いっか。
さじ加減うっかり間違えて再起不能にしちゃっても、仕方ないよねっ。
だってメス持って、いっちゃんに会いに来るような相手だもん。
そんな人、野放しにしてちゃ駄目駄目っ。
二度といっちゃんに近づこうなんて考えが浮かばないように。
ここでチカがきっちりと! ギリギリっと!
血ヘド吐いても許さないくらい、ゴリッとシメ上げとくべきだと思うんだぁ。
だから、腕の一本や二本、内臓のひとつやふたつ、グチャっと潰れちゃっても、チカのせいじゃないよ。きっと。
うんうん。いいってことで決定ーっ!
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