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「――もうっ! いっちゃんってば、ほんとに人騒がせなんだから!」
木目調の壁と床、落ち着いた欧州風のレトロな店内に、自分の喚き声が響いていく。
「チカがどんだけ驚いて心配したか、わかってんのっ?」
店内に流れるオルゴールのクラシック曲を台無しにしてると分かってるけど、止められない。
店の隅に設えられた丸テーブルに片肘をつき、だるそうにしている男に向けて、突き刺すようにビンビンと放ち続けた。
「……あー、うっせ。
もうちょいボリューム落とせよ。頭痛ぇ」
それに対して、低くこもった声が、唸るように返ってきた。
イートイン用のこじんまりとしたテーブルのせいか、それとも相手がかなりの高身長のせいなのか、テーブルから柄悪く足がはみ出している。
「……チッ」
吐き捨てるような舌打ちまで聞こえてきた。
サラサラの黒髪がかかる黒縁眼鏡から、斜に構えた鋭い視線が向けられてくる。
控えめに見ても、かなり機嫌が悪いようだ。
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