雪の降る夜はあなたと二人で

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  「寒い……」  京子が外を見ると、雪がちらつき始めていた。 「あら……初雪ね」  気候のいいこの土地で雪が降るのは珍しく、もうすぐ6時になるというのに外からははしゃぐ子どもたちの声が聞こえてくる。  けれど、浮き足立つのは子どもたちだけではないようで……。 「ふふ、雪が降ったなら今日はシチューにしなくっちゃ」  八割方出来上がっていたハンバーグをゴミ箱に捨てると、京子は冷蔵庫から人参やじゃがいもといったシチューの材料を取り出す。  リズミカルな音でそれらを切ると、鼻歌交じりに鍋に火をかけた。  雪が降った日はシチュー。その約束は、結婚から十数年が経った今もなお続けられている。 「今日のシチューの隠し味はなににしようかしら」  冷蔵庫の中を探すと、味噌が目に入った。そういえば、この間のテレビ番組で味噌を入れるとコクが出ると言っていたことを思い出す。 「うん、今日の隠し味はお味噌に決まりっと」  隠し味、というにはいささか主張しすぎる量の味噌をお玉に取ると、鍋の中へと投入する。 「さて、あとは……」  シチューのルーと牛乳を入れると蓋をして、京子は窓辺に寄り掛かった。     
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