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静寂と寒波の降り注ぐ夜。
街灯や家の明かりがぽつりぽつりと周囲を照らし、うっすらと白銀に染めあげられた町並みを照らし出す。
ただでさえひんやりとした空気なのに積もった雪で更に冷やされて、風が吹かずとも一歩外に出ただけでぶるりと身体が震える。そのせいか、雪にいくつもの足跡が刻まれているのにもかかわらず、人の姿は一切見当たらない。
――みんな雪の夜が嫌いなのかしら。
少女は開けた空間に置かれた階段と下り坂が混ざった遊具の一番上に座りながら、下唇を尖らせて足をぱたぱたと動かした。
誰も来ない。誰も居ない。
その場所の中央に立った柱のようなものの先端には円形の飾りが付いており、中には針が二本収められている。短い方が『2』を、長い方が『7』を指していた。
少女は一番上から広場の下を眺める。
月明かりに照らされ、雪玉と雪玉を重ねることによって作られた雪人形が大小それぞれいくつも並んでいるのが見える。その周辺には小さな足跡がいくつも重なっている。
なのに人が誰も来ない。
ひとちぼっちはつまらない。
少女は座った体勢のまま坂道を下り、雪だるまのもとに駆け寄った。
少女の走ったその足下に少女の足跡は一つも付かなかった。
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