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大小様々な雪だるま達。顔や手、それぞれのパーツ1つをとっても同じものはいない。口の代わりにつけられた枝や、目の代わりに埋め込まれた丸い物。それだけで、十分なほどの個性が出ている。同じ顔の雪だるまは見当たらない。
数人の雪だるまには手の代わりに差し込まれた枝の先に小さな手袋がはめられている。
この街で生まれた雪だるま達が、今宵、明日には消えてしまう――溶けてしまう少女のために集まった。
人々が寝静まった夜更け。
街灯の明かりの下、一人の少女と何人もの雪だるまが楽しさに明け暮れていた。
時計の針が『4』と『6』を指した頃、数人の雪だるまが少女に別れと感謝の言葉を告げ、もとの居場所に戻っていった。
帰った友人達に共通しているのは、彼らのパーツのどこかに人の所有物を含んでいることだった。
――あなたたちは帰らなくて平気?
残ったままむしろ動こうとしない雪だるまたちに少女が問うと、彼らはこくりと頷いた。
――……さいごまでいっしょにいてくれるのね。
そう言いながら、徐々に少女の姿が薄れていく。
うっすらと周囲が明るくなる。空に蓋をしていた暗闇が少しずつ押しのけられていく。温かい光が少女の身体と地面を照らす。
ほんわかとした酷な光。
ぽたり、と雪だるまの表面から水滴が滴る。
――楽しかったよ、ありがとう。
――またね。
『少女』の姿が跡形もなくその場から消える。
足跡も残さない彼女が確かにここに居た証はなにもない。知っているのはぎりぎり残っている雪の欠片のみ。
ずるり、と雪だるま達の形が崩れていく。
人々の知らない夜が明ける。
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