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こうなると、もうちょっと凝りたくなる。
卓袱台の上のものを全部除ける。布巾できれいに拭き、更に、資料用に買ったランチョンマットなるものを敷く。
コップも茶渋で薄汚れたものではなく、食器棚の肥やし状態だった切り子硝子の洒落たグラスにする。箸も新品で、箸置きまでセッティングした。
それだけで、見栄えがめちゃくちゃ良くなった。
「ふむ、これはなかなかの画面映え」
食事シーンの資料用に、とカメラを構える。
角度を変えて数枚撮り終えると、伸びないうちに、
「いただきます!」
手を合わせてコレを言うのも久しぶりだ。
真っ赤なスープに浮かぶ麺を箸でつかみ、口に運ぶ――
「熱っつ!!」
鮮烈な熱さが舌を焼いた。トマトジュースが混じっているからいつもより沸点が高いのか。ふぅふぅと冷まし、改めて麺をすする――と、
「……うっま!」
旨い。トマトの甘みと酸味が来たかと思うと、すぐにラーメンの塩気が来る。最後に残るのはなんとも言えない旨味。噛んで飲む込むと、空っぽのおなかが熱を持つ。空っぽの胃が喜んでいる。
息で冷ます時間すら惜しくて、園美は夢中でトマトラーメンをすすった。
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