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完成原稿をファイル転送サービスで送って、パソコンを閉じる。〆切には余裕で間に合った。
座椅子ごと後ろに倒れると、疲労感が全身を駆け巡った。バキボキバキッと関節が鳴る。
「つっかれたー……」
時計を見ると、朝の九時だ。昨夜十一時にバイトから帰宅して、すぐに作業に突入したから十時間ほどかかったということになる。
「我ながら早い! 偉い!」
ヤケクソっぽい口調で言うと、携帯電話が振動した。
今日行く予定のバイト先からだ。『雪がヤバイから仕事来なくていーよ。明日からよろしくー』とな。
「あーりゃま」
本日の日雇いバイトは外壁のペンキ塗りだ。天候に死ぬほど左右されるので、こんなドタキャンはザラだ。
ずるずるとコタツから這い出し、窓に近づく。
「うおぅ、雪だぁ」
あたり一面の銀世界。都会でこんなに積もるのは珍しい。道理でやけに冷えると思った。
室外機を置くスペースに積もった雪をちょんと触る。かき氷みたいだ。不思議と冷たさは感じなかった。
だが、ぞくりと寒気はしたので園美は窓を閉めた。
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