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冷蔵庫を開けると、侘しさが詰まっていた。
「最っ悪だ!」
買い出しを忘れていた。
「この雪じゃあ、外に出るのはキツいな」
かといってデリバリーを頼むほどの経済的余裕は無い。
かろうじて残っているのは、玉子がひとつ、牛乳、味噌、キャベツの芯、冷凍庫にストックしていた白米。ロクなものが無さすぎて冷蔵庫の号泣が聞こえる。
あとは出しっぱなしのおつまみチーズとドライソーセージ。
飢え死にの予感におののいていると、台所の隅の段ボールが目に入った。
「そーだ、母さんからの救援物資!」
一人暮らしの娘への母からの食料品。すなわち愛の手。こういう時こそその有難みが身に沁みる。
「まったく親ってのは偉大だぜ――って何じゃこりゃ」
段ボールはほぼ空だった。届いたのは先月で、その時にはこれでもかと詰め込まれた食料が消えている。
(まさか盗まれた……!?)
おのれヒトの食料を、と思ったが、
(犯人、私だ……!!)
先月も極貧で救援物資だけで食を賄ったのだ。 そりゃ無いはずである。
それでも何か残ってないかとゴソゴソすると、
「ラッキー、塩ラーメンあった」
幸運にもインスタントの袋麺があった。そのラーメンのメーカーのCMソングを口ずさみながら、何気なくパッケージの後ろを見ると、
「って、賞味期限切れてんじゃねーか!」
更に缶のトマトジュースがふたつ。これも賞味期限が切れていた。
更の更に、バジルとオレガノのドライハーブの小瓶が出てきた。これも賞味期限以下略。
「母さん……っ!!」
どう考えても「あらやだコレ賞味期限近いわ。園美にあげよう」と詰め込んだ品々。母の愛に泣きそうになった。
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