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「……死にゃしないか」
塩ラーメンに玉子とキャベツ入れよう、と鍋を持ったところで電話が鳴った。
相手を確認せずに出た。それが悪かった。
『園美ちゃん? 久しぶりーユキコおばさんよ』
うげぇ。母方の伯母の声を聞きながら、電話を切りたい衝動にかられた。
『こないだの法事で言ってたお見合いの件なんだけどね先様は来月の第三日曜日がいいって園美ちゃんもそれでいいわよね?』
いいわけあるか。事あるごとに縁談を持ってくる妖怪縁結びオバチャンに、園美はきっぱり言った。
「法事ん時も言ったけど、私はまだ結婚なんてする気ないってば」
途端に伯母が金切り声を上げる。
『はぁー!? 何言ってるのよ、アンタそんなこと言ってるから賞味期限ギリギリになっちゃったんじゃない!』
「……賞味期限?」
『いや品質保持期限? どっちでもいいわ! とにかくね、女にはリミットがあんの! 園美ちゃんもう二十五歳でしょ、それ過ぎると十二月二十五日過ぎたクリスマスケーキみたいに価値がグンっと下がるんだから!』
「価値……って」
『結婚市場ってのはね、若ければ若いほど有利なの! しかもアンタ、マトモに就職してないじゃない! 結婚もせずにこれからどうやって生きてくの、老後は!?』
「仕事はしてるよ!」
『仕事っても漫画家でしょ。単行本も全然出ないし、アニメにだってならないじゃない! うちの息子がね、友達に「従姉が漫画家なんだ」って言っても誰も信じてくれないって泣いてたのよ! そんな漫画家知らないって言われて、可哀想だと思わない!?』
(いやそれとこれとは関係ないだろ!)
『ともかく、そんな不安定な仕事にしがみつくのはやめて真人間になりなさい! あんなバカ高い学費の漫画家高校に通わせてもらったのに結果が今の状況で、お母さんたちに申し訳ないと思わないの!?』
ぐっと言葉に詰まる。
伯母は容赦なく喚いた。
『アンタの期限は切れかかってるのよ。いい加減それを自覚して、大人になりな!』
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