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第5話
ディールに行くまでの道のりは、国境の門を出てから一本道だ。
その道を馬車で移動するのだが、私たちはアクリスを出て1時間ほどの道で見つけた。周りに騎士がいるちょっとした小屋を。
騎士に事情を説明して扉の前まで来た。
「ククリっ!いるの?ねぇ!返事をして!」
そう叫びながら山小屋の扉を荒々しく叩く。
すると「うわあっ!」という懐かしの声とともにドタドタとこちらへ走ってくる音が聞こえた。
「え、お嬢!?何でこんなところに……っ!?」
「バカ……ククリのバカぁっ!!」
私はククリに抱きつき――もはやタックルといえるくらいの勢いで――叫んだ。そして胸板を叩いた。
「もうっ、会えないのかと思って、嫌だった、悲しかったよぉ……っ!!」
「え、お、お嬢?手紙、読みました?」
「読んだ……っ、盗賊に襲われたって……!」
「……まさかと思いますが、そのあとに送った手紙、読んでないんですか?」
「……え?」
「……はぁ、やっぱりですか……」
どうやら手違いから1枚の手紙が届いていなかったらしい。
……というよりも、その手紙が届く前に私たちが出てきてしまったのだが。
「そっちの手紙に俺は無事ですってのと、近くにいた人が小屋を貸してくれたので少し休んでから帰る、という旨を書いて送ったんですけどね……」
そう言って息を吐くククリを見て、彼が無事だと実感して安心しきった私は、ガクッと膝から崩れ落ちた。
「お、お嬢!?……あぁ、熱がありますね…俺のためにここまでしてくださり…すみません、ご心配をおかけして」
そう言うとククリは意識の朦朧とする私を抱き上げ、「俺のお嬢の手当をするために今すぐに帰りましょう」と騎士たちに呼びかけた。
私は最後にその声を聞き、意識を手放した。
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