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「……と言いますと?」
「俺は、貴女が近くにいないことが初めてなので不安なんです。どんな時にも基本的には一緒にいたので……だから、俺がディールに行っている間に何かあったらどうしよう、って考えてしまうんです」
「だから!大丈夫だって言ってるじゃない!」
「いいえ、貴女は分かっていません!俺のこの気持ちを……!」
「分かってるって!」
「俺は!お嬢と離れるのが嫌なんです!いつも一緒にいたから余計に!愛してやまない相手と離れなければいけないのですから!」
と言い切るとククリは呆然とする私を抱き寄せ、「貴女をずっと離したくない、そんな我儘を言ってしまいたくなるんです……」と耳元で囁いた。
未だ立ち直れない私はしばし動揺から立ち尽くしていたが、意識が戻ってくるとふと冷静になった。
「……全く、私と少し離れるくらいで何言ってるの?」
「少しでも嫌なんです!」
「……も」
「え?」
「……私もほんのちょっとだけそう思ってるかもって言ったの!」
すると彼は瞠目し、しばし私を見つめると「……そんなこと言って……今夜は覚悟してくださいね?」と妖艶に笑った。
余談だがこの夜。
「もういいですか、お嬢」
「ん……まだ、ダメ……」
とある部屋に男女ふたりの声が響く。
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