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深山兄弟出会う
深山亭は山を背負い、麓に古い和館を横たえている。周りには何もない。古き良き、日本の故郷里山が広がるだけだ。
兄弟を迎えたのは従兄弟の幸穂だった。
「久しぶり」
幸穂は昭穂の姉、千穂の一人息子である。深山亭から車で四十分ほどのところの大学に通うため、今年から宿を手伝いながら暮らしている。
「幸穂兄~!」
兄弟はこの、十ほども年上で温厚な従兄弟が大好きだ。
「幸穂、二人をよろしく頼むな」
「はい。頼まれました」
兄弟と昭穂は宿屋となる建物を抜けて、中庭を通って深山家の人々が生活を送る母屋に通された。
「よぅく来たねぇ」
「大きゅうなったか」
祖父母は祖父母で孫の夏の訪問を楽しみにしていただけに、延期になったのを寂しく思っていたのだった。
「政太兄!!!」
「久しぶりだなあ。昭穂さん、ご無沙汰しています」
のそっと姿を現したのは板前見習いの政太だ。背が高くがっしりして、気のいいこの青年にも兄弟は懐いていた。
昭穂はお茶をご馳走になり、政太、幸穂と両親に兄弟のことを頼み、兄弟の頭をくしゃくしゃっと撫でて帰って行った。
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