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ツマミに出されるオリーブのマリネや、季節の果物と合わせたカプレーゼなど、高級レストラン顔負けのメニューの他に、野菜を軽く煮たり、グラタンスープにサラダを添えたりの、疲れた体に優しい軽食は、独身男を虜にする。
夕暮れ時の軽いスウィングから、しっとりしたモダンジャズへ移るころ、夜更けた街の、ぼうっと滲むような暖かさに、惹き寄せられて男達が集まってくる。
バーテンは知らない。
少なからず、自分がその手の男性に興味を持たれる容姿であることを。
望んだわけでもないのに、どうして男しか集まってこないのかと、訝しく思いながら、闇の底にある場末のバーには、これはこれでお似合いなのかと、諦めてもいる。
きっと今夜も、バーテンの濃い眉の影にため息をつく者達が、密かに目配せをしながら、止まり木で頬杖を付くだろう。
熱い眼差しが、女しか愛さないバーテンには届かないと知っていて。
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