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 見るからに一見の客を拒むそのドアに、新たな客がすっと立ち入る。  淡い陽炎のような影だった。  ――またガキか…。  珍しいこともあるものだと顔を上げた真樹は、その影の薄い少年を睨みつけようとして、思わず目を背けた。  間違えて入って来たなら、何も言わずに出て行けと。  薄いバーボンをチビチビ飲んでいる笠井は、ちらりと目を向けただけで無視を決め込んでいる。  場違い。  そんな言葉を同時に飲み込んだかもしれない。 「ホワイリーバードってここ?」  痩せた子供だ。  体型を隠すザックリとしたトレーナーを着ていても、雰囲気そのものが痩せている。  小さな頭。細い脚。華奢な指先。  ひょろりとした体型は、少し背の高い少女に見えなくもない。  高校生くらいか、その声はどこか中性的だ。  見事に顔半分を覆っている黒々とした前髪と、今時どこで手に入れたのかと訝しくさえ思える太い黒縁の眼鏡が、顔が小さい分、異様な姿を形造っている。  黒髪は柔らかそうな艶があったがあまりにも重く、胡散臭いわけではないものの野暮ったい。  どこの田舎から出て来たかと、呆れそうになる。  見てはいけないものを見た気がして、真樹は同情的な気分にもなった。
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