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「真樹……」
コーヒーを手渡す真樹の手が震える。
その手をショウは弱々しく掴んだ。
女のような細い手首に、胸が塞がれる。
「一緒にやらないか。話はいくつも来ているんだ。哲郎が端から潰していくから、おれも何も言えなかった。お前は良い音を出す。経験は浅いが2~3年もすれば必ずモノになる」
「ショウ…」
2~3年……。
ショウは持たない。
「音楽の神様を見せてやるよ、真樹に」
追いすがるショウの手も震えている。
そろそろクスリが切れる頃かもしれない。
だが、切れる前にクスリを与える追い打ちはするなと、哲郎から言われている。
血も涙もない哲郎でも、ショウの才能は惜しいらしい。
少しでも長くギターを弾かせたい。
せめてもの情けなのか演歌じゃあるまいし、なんて薄暗い。
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