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「あんたが、狂っていた方がましだった……」
「真樹…っ」
「男に愛していると言われてどうすりゃいいんだよ。はいそうですかと言って、あんた納得するのかよ。それともキスして欲しいのか? 抱けばいいのか? 正気のあんたを? こっちが狂うぜ」
ショウの細い腕を突っぱねた。
終わったのだ。
たゆたう音の中で夢を見た。
そのひと時が過ぎ去ったのだ。
わかっていた。
自分にはプロとして活躍できるほどの才能はない。
ショウに導かれ、ショウと共鳴し、初めて人が聴いてくれる。
その程度の力なのだと。
ショウはプロだ。
ショウこそが天才であり、音楽の神なのだ。
自分は足元にも及ばない。
だけど、ショウと一緒なら夢を見られた。
その夢が、
今終わった。
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