◇ ◇ ◇

26/26
462人が本棚に入れています
本棚に追加
/480ページ
「あんたが、狂っていた方がましだった……」 「真樹…っ」 「男に愛していると言われてどうすりゃいいんだよ。はいそうですかと言って、あんた納得するのかよ。それともキスして欲しいのか? 抱けばいいのか? 正気のあんたを? こっちが狂うぜ」  ショウの細い腕を突っぱねた。  終わったのだ。  たゆたう音の中で夢を見た。  そのひと時が過ぎ去ったのだ。  わかっていた。  自分にはプロとして活躍できるほどの才能はない。  ショウに導かれ、ショウと共鳴し、初めて人が聴いてくれる。  その程度の力なのだと。  ショウはプロだ。  ショウこそが天才であり、音楽の神なのだ。  自分は足元にも及ばない。  だけど、ショウと一緒なら夢を見られた。  その夢が、  今終わった。
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!