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「ガキの来る所じゃねぇぞ」
「待ち合わせをしているんだ」
「誰と」
「さぁ……」
おそらく互いに嫌な野郎だと思った。
絡み合った視線に感じたのは同属嫌悪。
どこか世の中を捨てている冷ややかさと、大人を舐め腐った鋭い光が、ほんの一瞬火花を散らす。
まだ客のいない店内に、暮れかけた春の日差しが淡く斜めに入り込み、入り口に立つ若者を縁取った。
「何か飲ませてくれよ」と言う声が、やけに気取ったバリトンでますます気に食わない。
一人前に背が高く骨格がしっかりしている。
何気ない白シャツの襟元を乱し、ボタンフライのスリムジーンズが、折れそうに細い腰と長い脚を、嫌味に目立たせる。
精悍な顔立ちが大人びて見えても、伸びやかな手足と、女のような肌が匂う若さを隠せない。
ようやく二十歳を過ぎたあたりだろう。
「まだ準備中だ」
不愛想に言うと、
「コーヒーでいいさ」
と、サラリとかわす。
若さにありがちな、大人に見られたい願望も、負い目も感じない。
そんな余裕がますます生意気だった。
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