◇ナイト・ライツ◇

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「ガキの来る所じゃねぇぞ」 「待ち合わせをしているんだ」 「誰と」 「さぁ……」  おそらく互いに嫌な野郎だと思った。  絡み合った視線に感じたのは同属嫌悪。  どこか世の中を捨てている冷ややかさと、大人を舐め腐った鋭い光が、ほんの一瞬火花を散らす。  まだ客のいない店内に、暮れかけた春の日差しが淡く斜めに入り込み、入り口に立つ若者を縁取った。  「何か飲ませてくれよ」と言う声が、やけに気取ったバリトンでますます気に食わない。  一人前に背が高く骨格がしっかりしている。  何気ない白シャツの襟元を乱し、ボタンフライのスリムジーンズが、折れそうに細い腰と長い脚を、嫌味に目立たせる。  精悍な顔立ちが大人びて見えても、伸びやかな手足と、女のような肌が匂う若さを隠せない。  ようやく二十歳を過ぎたあたりだろう。 「まだ準備中だ」  不愛想に言うと、 「コーヒーでいいさ」  と、サラリとかわす。  若さにありがちな、大人に見られたい願望も、負い目も感じない。  そんな余裕がますます生意気だった。
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