◇ナイト・ライツ◇

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 若者は、第一関門のバーテンの鋭い視線をモノともしなかった。  スツールに細い腰を引っ掛けているだけなのに、やけに落ち着いて見える。  彫りの深い目元と眉間に向かう意思の強そうな眉。  冴えた瞳はどこか無機質で、若造のくせに覚めている。  秀でた額にかかる、少しクセのある黒髪が無造作で少年っぽく、大人に向かう息吹が眩しいようで、バーテンは微かな嫉妬を覚えた。  苦いコーヒーで追い出そうと、マンデリンを更に深炒りしたものを、嫌味のように、砂糖もミルクもつけずに差し出してみる。  どれだけ気取っていても、苦味を感じた顔は、幼く滑稽になるものだ。  いやらしく目を細めたバーテンの前で、若者は以外にもスッキリと目を覚ましたような表情を見せたので、バーテンは、途端に諦めのため息をついたのだ。 「合格」 「何が」 「飲むか? 酒」 「いや、コーヒーでいい。合格だ」 「生意気なガキだな」
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