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若者は、第一関門のバーテンの鋭い視線をモノともしなかった。
スツールに細い腰を引っ掛けているだけなのに、やけに落ち着いて見える。
彫りの深い目元と眉間に向かう意思の強そうな眉。
冴えた瞳はどこか無機質で、若造のくせに覚めている。
秀でた額にかかる、少しクセのある黒髪が無造作で少年っぽく、大人に向かう息吹が眩しいようで、バーテンは微かな嫉妬を覚えた。
苦いコーヒーで追い出そうと、マンデリンを更に深炒りしたものを、嫌味のように、砂糖もミルクもつけずに差し出してみる。
どれだけ気取っていても、苦味を感じた顔は、幼く滑稽になるものだ。
いやらしく目を細めたバーテンの前で、若者は以外にもスッキリと目を覚ましたような表情を見せたので、バーテンは、途端に諦めのため息をついたのだ。
「合格」
「何が」
「飲むか? 酒」
「いや、コーヒーでいい。合格だ」
「生意気なガキだな」
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