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若者はバーカウンターに片腕を乗せ、頬杖をつく。
細身ながら鍛えられた体のラインがわかる。
形のいい耳から顎のラインの精巧さが、よく出来たマネキンのように整っている。
そうだ。
出来すぎている。
そこにいるだけで人目を惹く。
なんの苦労もなく、努力もせず、それでいて最低限のマナーをわきまえていれば、女は吸い寄せられて来るだろう。
魅せられる。
そんな力を感じた。
バーテンはため息を無表情の下に押し込んで、グラスを丁寧に磨き続ける。
若さを無駄にした自分の過去が、チクリと疼いた。
「また来るよ」
「待ち合わせをしてるんじゃないのか」
「誰と?」
ニヤリと笑う。
大人ぶった落ち着きが、どこまでもふてぶてしい。
バーテンは応えるように唇の端でギュッと笑った。
それが、また来いよの合図。
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