◇ナイト・ライツ◇

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 若者はバーカウンターに片腕を乗せ、頬杖をつく。  細身ながら鍛えられた体のラインがわかる。  形のいい耳から顎のラインの精巧さが、よく出来たマネキンのように整っている。  そうだ。  出来すぎている。  そこにいるだけで人目を惹く。  なんの苦労もなく、努力もせず、それでいて最低限のマナーをわきまえていれば、女は吸い寄せられて来るだろう。  魅せられる。  そんな力を感じた。  バーテンはため息を無表情の下に押し込んで、グラスを丁寧に磨き続ける。  若さを無駄にした自分の過去が、チクリと疼いた。 「また来るよ」 「待ち合わせをしてるんじゃないのか」 「誰と?」  ニヤリと笑う。  大人ぶった落ち着きが、どこまでもふてぶてしい。  バーテンは応えるように唇の端でギュッと笑った。  それが、また来いよの合図。
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