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「また来るだろうよ。あんたの好みに合いそうじゃないか」
「いや、残念ながらあの子はタチだね」
「見ただけでわかるのか?」
「目がね、狩りをする獣の目をしていた。獲物を探している目だったよ」
「そんなもんかね」
「ノンケのマスターには興味ないだろうけどさ、上玉だ」
客の名前は笠井と言う。
本名かどうかはわからない。
この店でそう呼ばれているだけだ。
草食獣を思わせる、やや間の抜けた顔に明るい色の髪を撫でつけ、趣味のいいネクタイとクロノの時計が、モード系の職種を思わせるが、それも定かではない。
洒落た雰囲気が、当時は紳士族に随分もてはやされていたものだ。
いったいいつから一人前にタチに転じたのか、バーテンには興味もないことだったが。
「何か食うか?」
「ああ、軽く頼むよ」
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