◇ナイト・ライツ◇

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「また来るだろうよ。あんたの好みに合いそうじゃないか」 「いや、残念ながらあの子はタチだね」 「見ただけでわかるのか?」 「目がね、狩りをする獣の目をしていた。獲物を探している目だったよ」 「そんなもんかね」 「ノンケのマスターには興味ないだろうけどさ、上玉だ」  客の名前は笠井と言う。  本名かどうかはわからない。  この店でそう呼ばれているだけだ。  草食獣を思わせる、やや間の抜けた顔に明るい色の髪を撫でつけ、趣味のいいネクタイとクロノの時計が、モード系の職種を思わせるが、それも定かではない。  洒落た雰囲気が、当時は紳士族に随分もてはやされていたものだ。  いったいいつから一人前にタチに転じたのか、バーテンには興味もないことだったが。 「何か食うか?」 「ああ、軽く頼むよ」
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