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「真樹…っ」
細い指がきつく食い込んだ。
若々しかった肌は、今はもう張りもなく、澄んでいた瞳は血走り、ギラギラとした狂的な強さばかりがある。
真樹には哀しく輝いているように見えた。
「真樹……、おれはお前が欲しい……」
細い首の上にあるくっきりとした顔が柔らかく微笑む。
どこか遠くを見ているようだった眼差しが、切実に真樹へ注がれていた。
「ずっと欲しかった。初めて会った時から。お前は男らしい。姿も、心も、奏でる音ですら強い。おれの持っていないものを全て持っている。真樹。お前が好きだ……」
真樹にとって、持っていないものを持っているのは、ショウの方だ。
溢れ出る才能。
大人びた感性。
優しく穏やかな自信はショウを大きく見せる。
目が合えば殴り合うしかなかった真樹の棘を、初めから柔らかく包んでくれた。
肉親と言うモノに近い気がした。
兄とも、師とも……。
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