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秋山悟は今年、四十三歳を迎えた。
未婚である。京都府北部の山村の役場に勤めている。
父は若くして交通事故で亡くなり、生活が苦しくなる中、母は悟をおいて村を離れた。そのとき、悟は九歳だった。
その後は足が不自由な祖母の安子が育ててくれた。安子はいつも足を引きずるようにして田畑に出て働いた。
生活は決して豊かではなかったが安子はあふれんばかりの愛情を悟に注いでくれた。
たとえ貧しくても、悟は幸せだった。
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