第一章  お江戸は今日も大騒ぎ

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 そこで吉宗さまが大岡越前に命じたのが、町火消しの設立。定火消しにとっては、強力なライバルの出現だ。  然も、幕府のキビシイお財布事情を考えれば「新しく設立される町火消しの費用は、それぞれの町内持ちに為るらしい」、とひとしきりお江戸雀が騒いでいる。  つまりは其処が、サッサと町火消しが誕生できない所以でもあった。  「其れに、【赤猫】の一味が火ぃを点けるとこを物陰から見た蕎麦屋の爺さんの証言じゃよぉ、二人組の男だっていうじゃねぇか」  「へい、そうなんでさぁ。一人の男の頬のあたりには、おっきな刀傷があったそうですぜ」  子分の竹松が唾を飛ばす。  「とにかく、火ぃを点けさせねぇこった。お前ぇたちも夜回りに出る時にぁよ、しっかりと気張っておくんねぇよ」  伊三次が厳しい言葉で締め括って、子分の権左と竹松が駆けだしていった。
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