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福の神
夫は身体を壊すほど忙しく働き詰めていたというのに、会社とは薄情なものであっさりとリストラ対象者の中に入れられてしまった。
以前から田舎暮らしを夢見ていた夫。
せめて傷ついた心を癒すことが出来ればと移住は私の方から提案をした。
山の奥の更に奥にポツンとそれは建っていた。
人が住まなくなって随分と経つらしく、何も寄せつけたくなさそうな何とも言えないどんよりとした空気に包まれたその建物に、私は家の中に入る前から既に田舎暮らしを理想化し夢見すぎた事を後悔していた。
夫はその村役場で募集していた地域おこし協力隊員になり安いながらも仕事が見つかり、専業主婦だった私も久し振りに田畑の手伝いとして働きに出ることになった。
夫のお給料と私のお給料とを合わせてもまだ以前の夫一人の収入の半分以下。
貯蓄も早期退職金もあるけれど、なるべくならそれは使いたくはない。
何とか切り詰めて慎ましい生活を送っていた。
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