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「ごめんなさい。でも、肝心な時にかっこつけられないところが、私と似ているなと思ってしまって。……あの、柚兄様。私、柚兄様のためにマフラーを作ったんです。よかったら使ってください」
半ばがっかり、半ばホッとした柊子はそう言って微笑むと起き上がり、傍らに置かれていた柊子が持って来た小さなバスケットから赤いマフラーを取り出した。そして、鼻をすすっている柚希の首にふわりとマフラーを巻きつけた。
「……どうですか? 温かいですか?」
「うん……。とっても。柊子の匂いがするね」
「えっ、臭いますか!?」
「いや、いい匂いだ」
柚希は、マフラーを巻いていた柊子の手をつかむと彼女を引き寄せた。
「こうするのが一番温かいな」
「そ、そうですね……」
そう言い合いつつ、二人はぎこちなく星空の下で寄り添い合う。
こんなところを誰かに見られたらどうしようと柊子は(実は柚希も)気が気ではなかったが、サンタクロースがかけてくれた魔法が解けてしまったら勇気が急に萎んでしまうような気がして、けっして離れぬようにお互いの手をギュッと握り合った。さっきまで寒かったのが嘘のように熱いのは、心が興奮しているせいか、そばにいる恋人の温もりのせいなのか……。
どれほど経ったのだろう。やがて緊張が解け、二人の心が握った手と手のように一つに絡み合い始めた時、ホテルから優雅なピアノの音色が聞こえてきた。
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