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「私だって、もうすぐ大人ですもの。いつまでもサンタクロースのお爺様にプレゼントをいただいている子供ではないわ。私の真心をこめたマフラーを柚兄様にプレゼントして喜んでもらうんだもの」
柊子がマフラーを贈りたい大切な人。
それは、三歳年上のはとこの柚兄様――千鳥柚希だった。
柊子は、親戚のお兄さんの柚希のことを幼い頃から「柚兄様、柚兄様」と呼んで慕っていたのである。柚希も柊子のことを可愛がってくれて、実の兄妹だと他人から間違われるほど仲が良かった。
「でも、いつまでも兄妹だなんて嫌。もっと柚兄様に近づきたい。だって私たちは許嫁なのですもの……」
柊子の風花家、柚希の千鳥家、それに柊子と親しかった撫子姉様の実家である鹿野家は、毎年、帝国ホテルで開催されるクリスマス・パーティーに親族そろって出かけて、ダンスや豪華な食事を楽しんでいた。
ある理由から今は疎遠になってしまっている鹿野家は誘われないだろうが、今年も風花家と千鳥家はクリスマスの夜に帝国ホテルへ出かけるだろう。婚約を交わして日が浅い柊子と柚希の親睦を深めるためにも、両家の親はそうするはずだ。
大人たちの思惑に乗るかたちになって少し面白くないが、クリスマスの夜を柚兄様と過ごすことができるのは嬉しい。
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