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普段は柊子のことを子供扱いしている柚希もさすがに気まずいのか、柊子から視線を反らして手で口を覆いながらそう言った。若干赤面してしまっているのを隠そうとしているのだが、自分も恥ずかしさのあまり死にたいと思っている柊子が気づくはずもない。
「ええと……。寒くないかい?」
「は、はい。柚兄様が外套をかぶせてくれているので。柚兄様こそ寒くはありませんか?」
体があまり丈夫ではないのに、柚希は、寒空の下、自分の外套を眠っていた柊子にかぶせてくれていたのだ。
「柚兄様……迷惑をかけてしまってごめんなさい。私、柚兄様に子供扱いしてもらいたくなくて背伸びしてみたのに……。無理してしまってこんな迷惑をかけていたら子供扱いされても仕方ないですよね。……本当に私は馬鹿な子供です」
「柊子……」
柚希はそう呟くと、柊子の前髪を撫でるようにそっと触れた。洋装をしている柊子はいつもの束髪くずしではなく、長い髪を後ろに伸ばして赤いリボンをつけている。
「ごめんな。僕もこの一年間、色々と戸惑っていたんだ。昔から妹のように可愛がってい柊子が、急に将来の結婚相手になって……どう接していいのか分からなくてさ。だから、なるべく自然体で話しかけられるよう、わざと昔のように子供扱いして……。僕のほうこそ子供だよ。知らず知らず、許嫁の君のことを傷つけていたのだからね」
(柚兄様もそんなふうに悩んでいたんだ……)
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