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自分だけが柚兄様との関係で悩んで苦しんでいたとばかり思っていた柊子は驚き、何だかホッとしてしまった。柚兄様は前の許嫁である撫子のことが忘れられなくて、柊子のことなど頭に無いのではとずっと心配していたのだ。
「女性の気持ちを蔑ろにしてしまったから、撫子さんにも愛想を尽かされたのだと思うよ。
……柊子が女学校に入学した頃から、僕はずっと妹のように可愛がっていた柊子のことを一人の女の子として意識するようになっていたらしい。許嫁である撫子さんではなく柊子の姿をいつも目で追っていたんだ。僕自身が気づかなかった心の変化を撫子さんは敏感に察していて、萩介と駆け落ちする少し前にそのことを彼女に指摘されてさ。
自分以外の女の子に惹かれてしまっている許嫁のそばにいた撫子さんはきっと辛い思いをしていただろうね。本当に彼女には申し訳ないことをしたと思っている。……だから、彼女が今どこにいるのかは分からないけれど、萩介と幸せになって欲しい。心からそう思っている」
サンタクロースが魔法でもかけたのだろうか。
柚希はずっと自分の胸の内にしまっていた想いを柊子に包み隠さず告白した。
柊子は、柚希の気持ちがかなり前から自分に向いていたことを知って驚き、泣き出したいほど嬉しいような、自分は撫子姉様を傷つけてしまっていたのかと思って心苦しいような、複雑な心境だった。
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