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真夜中に赤々と燃える都内の高層マンション。火事になり、多数の死傷者が出たらしい。その頃、中山保は、何も知らず、パソコンでゲームに夢中になっていた。その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰だよ、こんな夜中に!」
ドアを開けると立っていたのは、元カノの井川美月だった。全身すすだらけでパジャマのまま。
「美月、どうしたんだ?」
「マンションが火事になっちゃって。知り合いもいないし。保を思い出して来ちゃった」
「分かった、とにかく中に入って」
保は、温かいココアを容れてくれた。
「ありがとう。恐かったわ、寝ている時だったけど、何か煙たかったから目が覚めて、外に出たら、すぐ建物が火に包まれて、たくさんの人が亡くなったみたい。辛いわ」
「亡くなった人たちは気の毒だったけど、君が生きていてくれて良かった!住むところもないんだろう?しばらくここに居るといいよ」
「ありがとう!早く働いて新しい部屋を見つけて出ていくわ」
「急がなくていいよ、可哀想に疲れただろう?風呂沸かしたから入りなよ」
それから、二人の共同生活は始まった。以前付き合っていたとはいえ、今は他人。カーテンで仕切るしかなかった。美月は、気を使い、食事や掃除をしてくれたりした。テーブルの上にはあまり美味しそうでない食事が置いてあった。
「美月、料理上達してねぇなあ?」
でも、そんな愛嬌のある美月のことが大好きだった保。でも、親友と二股かけていたことを知り、別れた。その直後に親友は、事故で死んだのだ。しかし、保は、美月と寄りを戻そうとはしなかった。
同居も半年がたった頃、美月は、保にアメリカに留学することを告げた。ショックだったが、美月は、決心が固かった。承諾したもののなぜか、寂しさを感じていた。思わず美月を抱きしめる。
「美月、行かないでくれ!俺と一緒になろう」
「保、大好きよ。世話になって勝手だけど、私は通訳になりたいの、夢を叶えてから、また、戻ってくるからそれまで待っていて」
美月は、アメリカに旅立ってしまう。1年後、美月からエアメールが届く。なんと、アメリカ人と結婚したとのこと。保は、その手紙を折り、紙ひこーきにして青空に飛ばした。
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