eins

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 気まぐれに見た10代向けファッション雑誌にこう書かれていた。女子高生とは、オンナが3年間だけ身に付けることが許される期間限定の激レアブランドだって。  ただし、パリピやリア充に限ると私は心の中で付け加え、雑誌を棚に戻した。  同じ服を着てもオシャレに見える奴もいれば、ダサい奴もいる。JKという名のブランドは、誰にでも着こなせるわけじゃない。  スクールカースト。  学校内では常に生徒たちが互いを査定して、ランク付けし合っている。不登校にでもならない限りカースト制からは逃れられず、決められた身分を受け入れて卒業まで全うしなければならない。  スクールカーストで最下層の人間は、陰気なキャラ――陰キャと呼ばれ、希少なブランド品とは思えない程に心身ともに傷つけられる。 「化粧くらいしてこいよ、このブスメガネ!」 「コウ君、超ヒド~イ。ド直球過ぎ~」 「だって事実だろ? ブスでメガネだし」 「アハハ! 超ウケるんですけど~」  テンプレな若者言葉をコピペしただけみたいな品のない悪口。カースト上位のJKたちに口撃され、歪んだ愛想笑いしか返せない私の心にどれだけ傷がついているか……コイツ等に見せてやりたい。見せたところで、また笑われるだけだろうけど。 「まあ、元がこれだけブスだと化粧しても無駄か」 「ブスメガネだって、それわかって化粧してないんでしょ? やるじゃん」 「それな」 「ハハハッ。さすが、ブスメガネ」  確かに私はメガネを掛けたブスだ。毎朝、自分の顔を鏡で見るだけで鬱になるくらいの。それでも、人には言われたくない。  私の名前は、加納リョウコだ。
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