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ニシナミ
「JC2 佐保 ホ別 TU 松山市内」
予測変換ですぐに出る文言を匿名掲示板に打ち、LINEの裏IDを末尾に添える。意味は「当方女子中学2年生ホテル代別3万円で松山市内にて援助交際希望」と、少しでも知識がある人間なら分かるシンプルな暗号だ。
リンク先のプロフィール画面に表示されているイヌ耳とイヌ鼻で加工されたナミの顔は、巷に溢れる似たようなJCの顔に埋もれて、特定されることはまずない。
(反応悪。いつもなら即レス来るのに。こっちも過疎ってきたな。ツイッターにするか……)
ナミはジェラピケの部屋着でベッドに横たわると、パズルゲームアプリを起動した。「Dog真」というデベロッパーのロゴ。先日、株が暴落したとかいうニュースを見たが、まだゲームは残ってるようだ。ちまちまとパズルを解いていると、着信が鳴った。LINEの友達申請とメッセージ。
「掲示板みました。当方30代。身長体重普通」
JSに比べれば価値はやや下がるが、JCという価値に群がるロリコンが大勢いることを、ナミはよく知っている。
「51E 21:30」
ナミが返信した。待ち合わせ場所と時間だ。この暗号を解けないのならそれまで。数秒で親指を立てたスタンプが返ってきた。
「お仕事、お仕事……」
呟きながら、トラとプルにメッセージを送る。
「hit」
プルの返信はすぐにきた。
「おっけい」
トラの返信を待つ。10分。20分……。既読はついたが、返事が来ない。
「んだよ、もう!」
ナミがプルに「トラが反応しない。どうする?」と打つと、3秒もしないうちに返信が来た。
「一人でもダイジョウブだぁ~」
志村けんのスタンプと共に、そう返ってきた。
「……全く大丈夫な気がしないんだけど」
仕方ない。2人だけでやるか。
プルは前歯が一本欠けていて、口を開けると間抜けが露呈してしまうが、ガタイがいいし、特殊警棒を持つとそれなりに迫力が出るので、まあ何とかなるだろう。分け前も三分の一にしなくていい。
ナミはベッドから身体を起こし、部屋着を脱ぎ始めた。
地毛である赤毛のショートを黒髪ロングのウィッグで覆い、学校バレしないよう、フリマサイトで買った制服を着る。スカートはやや短め。メークはナチュラル。「Hに興味がある、こっそり悪いことがしてみたいJC」のキャラ設定に寄せた姿だ。本来の自分とも、学校に行く時の「二年三組。出席番号17番のニシ・ナミ」ともまた違う、「エサ」としてのキャラクター。
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