3人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「ああっ!ナミ!」
「どした?待ち合わせの子が来たんか?」
「スイマセン、失礼します!」
「おい、トキサダ!」
タニさんを無視して猛ダッシュで単車のところに戻り、走り去るトラックを見失わないよう、プルは慌てて追跡を開始した。
ボロの単車なのでなかなか追いつけず、石手川ダム方面への道を進むにつれて車も信号も減って上り坂になってゆき、徐々に距離が離されていく。
「(一体どこへ連れ込む気だ。まさか相手は殺人鬼で、山奥で殺そうとしてるんじゃ…)」
スプラッター映画で見たシーンのように、ナミがレイプされた後バラバラに惨殺されるシーンがよぎり、自分にビンタをしてその恐ろしいイメージを振り払う。このままじゃマズイと、プルは追いながら片手でトラにメッセージを打った。
「やばいナミが拉致られそう。ダムへの道を追ってる。俺だけじゃムリ!」
「トラ、ぶち切れるやろな……」
先程は無視されたが、「見失ったら目ぇ潰したる」という返信がきた。
トラは凶暴だがいつも頼りになる。ナミがホレるのも分かる。
二つ目のトンネルを抜けた辺りで、近道の農道を通ってきたトラの(正確にはトラのオカンの)スクーターが脇道から滑り出てきて、プルの横に並んだ。「よく来てくれた」と手を差し伸べようとすると、肩を思い切りパンチされた。
「わあっ!」
衝撃でハンドルを持つ手が取られて、あやうくバイクごと崖の下に落ちそうになる。
「あぶないて!」
「勝手にやってんなよクソが!ぶち殺すぞ!」
「だって、トラが反応してくれんから……」
「やめたらエエやろボケが!どれや。あの青いのか」
「おう」
荷台に積まれた何かがトラックが揺れる度に揺れ、シートの一部がめくれて中がチラチラと見える。黒光りする何かの機械のようだ。
「(何やこれ……?)」
妙な胸騒ぎを覚えるが、それが何なのか分からないし、そんなことはどうでもいい。あのトラックをどうにかして止めなければ。
2人になったお蔭で俄然勇気が出たプルは、クラクションを連続で鳴らしてトラックの運転手を威嚇した。トラも呼応してビービーとクラクションを鳴らすが、トラックが止まる様子は全くない。トラがイラついて言う。
「聞こえてないんか?」
「音楽でも流してるとか……」
「クソッ」
最初のコメントを投稿しよう!