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とても懐かしい感覚だ。気が付くと顔がほころんでいた。
「何の用意もしてないけど…まあ、入れよ。朝飯ぐらい出す」
「で?今日は一体何の用で来たんだ?仕事はどうしたんだ」
3人でパンと紅茶だけの質素な食事を済ませた後、俺は如月に尋ねた。如月は紅茶を飲みながら、チラリとテレビを見る。
「それについては…あ、ちょうど始まった」
何がだよ、という言葉はテレビの音によってかき消された。
「速報です!昨夜、超人気俳優の如月蓮也さんが無期限の活動休止を発表しました」
テレビの中で如月が主演の連続ドラマの映像が流れる。俺は驚いて、目の前にいる当の本人の顔を見つめた。
「活動休止?お前一体どうしたんだよ」
「そうよ、如月くん。ドラマはどうしたの?」
「ドラマは昨日撮り終えたんです」
如月は少し困ったように微笑み、そう返した。
「何やってるんだよお前…今が大切な時じゃないのか?」
如月は17の時、一人で上京してきて小さな劇団に入った。天才的な演技力を持ちながらもなかなか陽の目を浴びなかったが、ここ数年でようやく注目され始め、こうしてドラマの主演を任されることも増えてきたのだ。
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