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俺がまくし立てると、如月は困ったように笑う。 「うーん、まぁそうなんだけどね」 「何か理由でもあるのか?」 「…うん。実は君に頼みたいことがあって。聞いてくれるかい?」 すっかり冷めきった紅茶を飲み干し、やけに真剣な顔でそうつぶやいた。 「美香は友達と旅行に行った。明日まで帰ってこない」 「そうか。あまり他人に聞かせられない頼みだからね、ちょうど良かった」 美香を見送った後、2階の自室に彼を連れて行った。俺のベッドに図々しく胡坐をかくので注意してやろうと思ったが、そんな雰囲気じゃなかったのでやめた。 「あんまり時間がないから、単刀直入に言うよ」 如月は凛とした表情で俺を見つめる。そのあまりの気迫に、思わず蛇に睨まれた蛙のように身を小さくする。俺はこれから、とんでもない頼み事をされるんじゃないか? 直感的にそう感じた。 「僕の顔を、めちゃくちゃに壊してほしいんだ」 ひどく凍てついていて、聞くだけで全身が冷えるような声だった。如月は冷たく微笑み、容赦なく続ける。 「君はとても切れ味の良い刃物を持っているだろう?それで僕の顔を切り刻んでくれよ。でも痛いのは嫌だ…切る前に僕を深い眠りに誘うような…そんな薬を打ってはくれないか?」
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