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「え…ん?いや、それって…」
「頼むよ、こんなことを頼めるのは君しかいないんだ!」
熱っぽい口調でそう訴えかけ、俺の手を両手でガシリと掴むが、俺はそれを振り払った。
「お前…それってつまり、俺に手術をしろって言いたいのか?」
「そうだよ。何たって君は、僕が知る限りでは一番優秀な整形外科医だからね」
先程とはうって変わってにっこりと笑う如月に腹が立つ。
「いちいち演劇口調で、意味深な言い方をするな!お前の演技はすごいから飲み込まれちまうんだよ!」
「褒めてくれてありがとう」
「そうじゃない…」
ああ、何だかこんな風に振り回されるのも久しぶりだな。
「本題に入っていい?」
「お前がふざけてたんだろ…どうぞ」
如月はこくりと頷き、60代ぐらいの男が写った写真を手渡した。
「僕をその男そっくりの顔にしてほしいんだ。君ならできるだろ?」
「できることにはできるが…何のために?」
写真の中の男の顔には幾多のシミや皺が刻まれ、お世辞にも見栄えのいい顔とは言えない。その上、如月は日本人離れした、まるで西洋の彫刻品のような顔の作りをしていて、男の俺から見ても美しいと思えるほどだ。
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