タクシーに連れられて

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5年前、私は会社を立ち上げた。最初はほぼ一人で全て回していたのだが、人脈も増え、共に会社の拡大を目指すパートナーもできた。しかしその人はだんだんと会社内での権力を強め、私はいつの間にか社長の座を奪われた。だんだんと仕事を減らされていき、1年前、ついにその人に会社を辞めろと言われた。私はさすがに抵抗した。だがやむを得ず、私の売ろうとしている家をその人が買う条件で私は退社するという暗黙の和解を果たした。 しかしそれは口約束だった。ただの口約束だったのだ。 今日私は会社を辞めた。辞めた後のことを考えて、少しずつ準備をしてからの退社だった。最後、私が挨拶行った時、家のことを話すと「そんなこと聞いてない。」とその人は言った。 呆然とした。私はどこかでまだその人を信用していたのだ。長い間一緒に会社を盛り上げ、勝ち取った様々な成功に喜びあった日だってあった。その人はそんなことまるで無かったかのような目で言ったのだ。私は根本から裏切られた。それと同時に私がまた新しい事業を始めようと準備してきたものへの資金も無くなった。これから、どうすればいいのだろう。 その人は私の彼で、その家は彼と私で住むはずだった場所だった。 光の線が真っ直ぐになってきた。すると運転手の話とラジオのクリスマスソングが耳に入ってくる。運転手は自分の話を好きにしてるようだった。 「……それでその猫がですね、構おうとしたらこっちを向いてくれないし、仕事をしようとしたらパソコンの上にのってきたりするんですよねー。」 つい私は笑ってしまった。こんな猫の話を知らない人にする人がいるのか。すると、運転手も少し笑って話しかけてきた。     
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