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「あ、やっと聞いてくれましたか?」
「すみません、猫の話にちょっとわらってしまって、」
「いえ、大丈夫ですよ。今日は少し寒いですね。暖房はつけてるけど、手足が冷えます。」
「そうですね。私も冷え性なのでちょっと寒いです。」
喉の下の方が少しあたたかくなっか気がした。この運転手さんの話はどこか懐かしく、ほっこりする。
「運転手さん、話、聞いてくれませんか?」
「聞きますよ。」
「私、今日ある人に、いえ、大切な人にに裏切られてしまって。今日というかもうずっと前から関係が崩れてしまっていたんですけど、やっぱり大切な人だったんです。これからどうしたら良いかもわからなくて、」
「そうですか。とても大切な人なんですね。」
「結婚の約束もしてたんです。もう自分の会社までとられるし、残ったのは誰も住まない家だけって、笑っちゃいますよね。」
あはっ。と私は笑った。
「だめですよ。悲しい時に笑っちゃ。辛いときは辛いって言わなきゃだめです。私の考え方ではありますが、なにかが終わってしまったら必ずまたなにか始まります。ゼロになってしまったらまた積み上げます。新しいものに出会えるかもしれない。誰かが離れてしまっても、また誰かがやって来ます。」
また目に涙が滲んできた。
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