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「三体月の伝説?」
あたしは、スプーンを口からはなして、ヨウちゃんを見あげた。
自宅カフェ「つむじ風」の窓の外は、すでに真っ暗。ヨウちゃんちの庭のハーブたちも、黒一色で、闇の中に溶け込んじゃってる。
「綾、覚えてねぇ? 学校で、花田市の民話について調べたとき、そういうのがあったじゃねぇか」
あたしの向かいで、ヨウちゃんがクリームスープを飲み干してる。
「あれは、えっと……。四年んときだったか……」
「四年生~? って、二年も前の話じゃんっ!! それに、ヨウちゃんと班がちがってたら、調べた民話だって、ちがってたはずだもん。人の班の調べたことなんて、覚えてるはずないよ~」
「まぁ、そんなもんか……」
あたしの前のテーブルにも、クリームスープが置かれている。それにズワイガニとトマトのクリームパスタに、ダイコンのしゃきしゃきサラダ。
いつものように、小学校の帰りにヨウちゃんちの書斎に寄って。
おしゃべりに夢中になってたら、ヨウちゃんのお母さんが、あたしのぶんの夕飯まで、用意してくれた。
これ、わりといつものこと。
さらに、夕飯のあと、ヨウちゃんのお母さんが、車であたしの家まで送っていってくれるのまで、いつものこと。
「中条さんに迷惑かけるから、葉児君の家にしょっちゅう行くのはやめなさい!」ってママは怒るけど。ヨウちゃんのお母さんはいつも、ぽっくりエクボをつくって笑ってくれる。
「綾ちゃん、葉児のカノジョでいてくれて、ありがとね」なんて、言ってくれる。
いごこちのいい、ヨウちゃんち。
閉店後の店内は、あたしとヨウちゃんの貸切で。
薪ストーブで、炎がパチパチと燃えていて。
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