第2章 少年の夢

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彼は、肩を震わせながら、涙を必死でこらえている。 「先生! どうしてボクは奇跡で治してもらえないのですか? 先生の評判は知っています。難しい病気の人達が、先生の『心の処方箋と神様の光で、たくさん治ってる』って!!」   「聡太くん。苦しいのは解るよ。残念だけど、もうすぐ右目も完全に見えなくなると思う。でも、たとえ目が見えなくなっても、人生には目的があるんだ。聡太くんが『本当に成し遂げたい事』は、生まれる前にあの世で誓いを立てて来ているんだよ」  すると、聡太くんは、かっとなって怒り出した。 「『苦しいのは解る』って? 先生は何にも解っていない!! だんだん見えなっていく苦しみを知らないから、そんなことが言えるんだ!!」 「毎日、毎晩、ボクは、夜、寝るのが……怖い。……朝、起きた時、もし目を開けても、真っ暗だったらどうしよう……大好きな父さん母さんの顔も、友達の笑った顔も、見れなくなるって? もし、忘れてしまったら、みんなの顔を、どう思い出せばいい? それに、ボクの『成し遂げたい事』だって?」  聡太くんは、ガタンと大きな音を立てて、乱暴にその場に立ちあがり、身を乗り出した。そして大声で怒鳴った。 「ボクが本当にやりたいことは『目が見えないと出来ないこと』なんだ!!……なんにも解らないで、偉そうな話ばっかだ。もう何も信じないよ! 何も聞きたくない! 神様もいないって! 祈って来たけど、結局ダメじゃないか! ボクの一生はもう終わってるって! もういいよ、母さん帰ろう」  聡太くんは、ほほを紅潮させ興奮状態だ。紫織は焦った。どうしよう……。 「ちょっと! 待ちなさいよ!!」 そのまま帰ろうとする聡太に紫織が言い放った。
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